インプラント治療の失敗

それではこの章ではインプラントの失敗についてお話しましょう。過去21年の臨床経験の中で多数のインプラント治療を行いましたが、幸いなことに重篤な失敗に遭遇したことはいままではございません。そこで文献、レポート、他の先生のお話などから、インプラント治療における代表的な失敗についてわかりやすく書こうと思います。
ご存知のようにインプラント治療は90%〜95%以上の高い成功率が8年から10年経過した後も得られる、非常に成功率の高い治療です。このことは世界中の研究者によって学問的に裏づけられています。しかし残念ながらその成功率も100%ではありません。多くのインプラントを手がけるうちに当然、一定の割合で失敗も出てくるということになります。このことは客観的な事実として術者、患者様共にしっかり把握することが肝要だと思います。
 
 
 インプラントが機能するまでの失敗
1.インプラントを植立してから2〜3週間後に抜ける場合
これは初期における細菌による感染が考えられます。大体の場合はヘビースモーカーや何らかの成人病がある方におきやすく、また、インプラント周囲の骨が異常に柔らかい場合や異常に硬すぎる場合にもおこります。症状はインプラントに触れると揺れを感じ膿が出たりし、ある日ぽろっと何事も無かったように抜け落ちます。

対処法
インプラントが抜けてから最低でも1〜2ヶ月経過後に最後植立をすれば定着します。


2.インプラントを植立して被せ物をした直後に抜ける場合
この場合はよくあるのが増骨した後にインプラントに力をかける場合にインプラントの結合が弱く骨から剥離する場合があること。そのままインプラントに力をかけないようにしてしばらく放置することで大抵は再結合して使用可能になる。


3.インプラント植立後から長期にわたり痛みが出る場合
この場合はインプラントの先端部と接している骨がドリルの際に骨の細胞に熱を与えて炎症が起こる場合です。

対処法
鎮痛剤や抗生物質で傷みと炎症を和らげることでしのいでいただきます。ほとんどが一時的でその後症状は引いて使用可能となるので最終的には問題にならないことが多い。


4.下顎にインプラント植立後、唇がしびれている
これはインプラント植立の際神経を傷つけたかあるいは傷口の腫れのため一時的にしびれているかで太い神経を完全に切断していない限りほぼ回復するといわれています。回復は2週間から1ヶ月が多く時には2〜3年かけて回復するケースもあります。

対処法
インプラントと神経が触れていないときは2週間~4週間様子みて回復傾向にあれば経過をみますが、
神経麻痺を疑う場合は当院では早急にインプラントを撤去します。


5.骨が少なくて機能する前に抜ける
これはもともと骨が非常に少ない場合にインプラント植立が困難で抜けてくることがあります。骨をもう一度作り直してから再度植立を行う。


6.上顎の奥歯にインプラント植立やサイナスリフト、ソケットリフト法の後鼻血が出る。鼻汁が出る
これは上顎洞と言う鼻に通じる空洞に炎症が見られるときにでます。だいたいはお薬を2週間ほど飲んでもらえば治ります。
このように一時的な問題はわりと起こるものでいかにその後対処していくかが重要になります。






 インプラント機能後の失敗
8.長期的経過後に抜ける場合(3年ぐらいで)
この場合はインプラントに負荷がかかりすぎているためにインプラントと骨の境目に亀裂が生じ剥離しながら抜けます。特に上顎の柔らかい骨に植立した場合この可能性があります。また歯軋りがあり毎日インプラントに異常な咬合力がかかっているときも抜けます。

対処法
この場合は再度植立時に長くて太いインプラントに交換するか隣に追加でインプラントをいれる。


9.歯周病で抜ける場合
メインテナンスリコールに全く応じてもらえず放置しさらに回りの歯にも元々重症な歯周病がある場合は汚れがたまり始めると急速にインプラント周囲の骨が溶け出しぬける場合があります。

対処法
この場合はほとんどは部分的に骨が溶けているのでその部分に薬剤注入し汚れをとり患者さん自身でも汚れがうまく落とせるように再指導する


10.歯軋りで抜ける場合
周囲の歯が削れたようにとがりインプラントにも異常なストレスが常にかかると次第に動揺して抜け落ちます。

対処法
この場合は再度植立時に長くて太いインプラントに交換するか隣に追加でインプラントをいれるか、その兆候が見られたらマウスピース(スプリント)を夜間に装着していただきます。