現在のインプラントはインプラント体を顎の骨に埋入して、オステオインテグレーション(骨との結合)をさせることによって機能を営みます。すなわちインプラントを成功させ、また、長期にインプラントを機能させるためにはインプラントの周囲に十分な骨の存在が必要です。実際にどれぐらいの骨が必要かというと、インプラント周囲に最低1mm。また、危険部位、下顎の場合は下歯槽神経から最低2mm、上顎は上顎洞から1mmの骨が確保されていることが条件となります。前章の最新のインプラント治療でご説明したように、現在はこの骨がなくてもGBR法やサイナスリフトを利用して骨を造成してインプラントが埋めることができるようになりました。しかし、これらの方法は通常のインプラント手術にプラスして、やや大きい外科的な侵襲を患者様に与えることになります。前述のとおり通常のインプラント手術は痛み、腫れなどは極小さいものですが、GBR、サイナスリフトを行った場合は症例にもよりますが、腫れ、痛みはやや大きいとお考えください。また、治療期間は一般に2〜6ヶ月ほど延長します。さらにその成功率は行わなかった場合に比べやや落ちることが報告されています。さらにまたGBR、サイナスリフトを行うとその分の治療費が加算されますので経済的負担も増大します。以上のことを考えてみますと、インプラント治療を成功させるためには、歯を抜いたらその部位の骨がやせないうちにインプラント治療を行うことが「簡単な手術で」「抜群の効果で」「安くあがる。」という3つのキーワードを満たすものなどです。歯が抜けても反対側があるからまあいいかと放置しておいたり。とりあえず入れ歯で様子をみようとしている間に抜けた所の骨はどんどん萎縮します。歯の周りの骨は歯槽骨といって歯を支えるためのもので、歯が無くなると自然に吸収してしまうようにできているからです。繰り返しになりますがインプラント治療を選択されたら「簡単な手術で」「抜群の効果で」「安くあがる。」ためには歯が抜けたら(一定の治癒期間を置いて)できるだけ早期にインプラントを入れる。このシンプルな方法が非常に重要と考えます。
インプラント手術に限らず、外科処置は手術中に予期せぬことが起こることがあります。そこで慌てない為には、一つは経験です。以前にやった同じような手術の経験から類推して判断するのです。そしてもう一つは事前の情報収集だと思います。近年は診断技術の発達によって以前とは比べられない程、情報を収集することが可能になりました。その最たるものがCTを利用したインプラントシュミレーションシステムです。
当院では平成16年より提携病院でCT撮影を行い顎の骨の断面画像を撮影し、収集したデーターをインプラントの検査専門のソフト(10DR INPLANT 3D)を使用し、歯科医院でそのデーターを見ながら治療の計画を立てます。より安全で、無理のない治療を受けることが出来る最新の方法です。このソフトは当院が愛媛県で2番目に導入いたしました。
◆CTとはどういうものでしょうか?
コンピュータ断層撮影のことで、X線とコンピュータを使って体の断面を輪切りの状態(断層画面)で見ることが出来るようにする装置です。
◆何のために診断を行うのでしょうか?
歯科医院ではよくX線撮影をしますが、これは一方向にX線を透過させただけのもので、歯の様子を見たり虫歯の状態を見るためにはとても役に立ちますが、インプラントの治療においては、顎の骨の厚さや形を調べることが重要です。CTで撮影した画像からは顎の厚さや形がわかるだけではなく、骨の硬さや神経の位置なども調べることができます。
CTを撮影するには、提携病院に予約を入れてから撮影に行きます。病院ではCTを使用してわずか数十秒の撮影時間で顎の骨の断層撮影を行いますが、準備がありますので全体では30分から1時間くらいとお考えください。
当院ではCT撮影した画像を解析し、コンピュータを使って画面を見ながら一人一人の治療方法やそのためにかかる費用を丁寧にご説明いたします。
インプラント治療を成功させるために大切なことは事前の診査、診断に時間を
かけることがとても重要であると私は考えています。