従来治療法との比較[咀嚼機能回復][使用可能年数]

それでは、この章よりインプラント治療と従来の治療法との違いを詳しく説明していきましょう。まず歯が抜けた所を人工物で補う方法(専門用語で欠損補綴といいます。)は大きく分けて3つしか存在しません。1つは入れ歯(義歯)です。2つめはブリッジです。しかしブリッジの場合は原則的に歯が抜けた場所の両隣に歯が存在していることが条件となります。最後の3つめが最近注目を集めているインプラント治療です。皆さんよろしいでしょうか
歯が抜けた所を修復する方法はこの世の中にたったの3通りしか存在しないのです。
 それでは各項目に沿って、それぞれの治療の比較を行ってみましょう。
まずは咀嚼機能回復です。
[咀嚼機能回復]
 いきなりむずかしい文字がでてきましたね。咀嚼機能回復とは物を噛み砕く機能がどれだけ回復するのかという意味です。
● 最大咬合力(噛む最大の力を重量で換算すると)は天然歯の場合50〜60kgといわれています。総入れ歯の最大咬合力は15kgです。噛む力は天然歯の1/4〜1/3くらいにしかありません。インプラントの場合は天然歯と同等かそれ以上の咬合力が発揮されます。
● 咀嚼効率(物を噛み砕く効率、一定の物をどれぐらいのスピードで噛めるかで計測)
は下顎の部分入れ歯で計測すると、天然歯の1/2〜1/3ぐらいにしかありません。
つまり入れ歯の場合、同じ物を噛むのに天然歯に比べ2倍から3倍の時間がかかる
ことになります。
● 噛むリズムは入れ歯を入れた人ではやや不安定ですが、インプラントを入れた人では、
  歯がある人とほぼ同等の安定性が回復できます。(田中1999)

このようなデーターを見るまでもなく、入れ歯では天然歯のように噛むことができないのは明らかです。「私は現在の入れ歯に満足している。」といわれる方もございますが、あくまで、それ以前の入れ歯と比較して満足しているのであって、決して、過去の天然歯の時代と比較して満足しているわけではありません。所詮入れ歯は入れ歯です。道具でしかありません。ご自分の天然歯があった時のように噛めないのです。義歯患者の80%は義歯に不満足というデータもありますし、薬局での義歯安定剤の売り上げは年間100億円を突破しています。Quality of life が叫ばれて久しい現在、天然歯に比べてはるかに劣る義歯のみを提供する歯科医療は過去のものとなりつつあります。
 一方インプラントは天然歯とほぼ同等の咬合力、咀嚼力を発揮できますし、感覚的にも天然歯となんら変わりません。インプラントで噛むと、咀嚼感覚が違うという患者様はほとんどいません。


□参考文献  インプラント ジャーナル2004 No24 田中收 ここが知りたいインプラント臨床



[使用可能年数]
装着した修復物が何年使えるのか?どれくらいもつのか?といううことは患者様にとってとても重要な関心事項です。まずは、1〜2本、歯が抜けた所をかぶせる時、当たり前の補綴と考えられているブリッジですが、岡山大学予防歯科のデータ(下図)によれば、平均使用年数は約8年です。言い換えれば、8年の残存率が50%しかないのです。しかもブリッジはかけた歯の崩壊を伴う危険性が大きいのです。
 また、部分入れ歯では、平均使用年数が3年で70%、5年で40%しかありません(雨森洋他 補綴誌23、1968)すなわち、義歯の残存率が50%になるのは約4年です。言い換えれば義歯の平均寿命は4年ということです。しかも、維持歯(入れ歯のバネをかける歯)の崩壊や顎の吸収を伴う可能性が大です。また維持歯(入れ歯のバネをかける歯)の
虫歯の発生率は4年で93%に及びます(Carlsson,GE:Acta Odont Scand23、1965)すなわち入れ歯のバネのかかった歯はほとんど虫歯になるということです。
 一方、インプラントですが10年経過でも残存率が90%を超えるのが当たり前です。
「インプラントの平均寿命(残存率50%)は何年?」という問いに対しては、オッセオインテグレーテッドインプラントは30年たった現在でも残存率50%という報告はほとんどみられませんから、それ以上ということになるでしょう。これらの医学的データをみるかぎりインプラントの使用可能年数は従来型の補綴法である義歯やブリッジに比較してはるかに長期であることがお分かりいただけたでしょう。また、失敗、撤去に至っても、残存歯にはほとんど影響はありませんから、従来の義歯やブリッジとは全く異なります。